年金受給者の債務整理|自己破産も可能です
年金受給者の方でも、債務整理をする方がいらっしゃいます。
たとえば、年金生活を送っていても、旧来の友達との交際費が嵩んだり、冠婚葬祭が重なったりで、まとまったお金が必要になることがあります。そこで、消費者金融やカードローンからお金を借りてしまいます。
その後、順調に弁済を行っていけばよいのですが、ついつい余計な出費を重ねてしまい債務を増大させてしまうケースです。
また、現役時代にある程度の収入のあった方が比較的多額の借り入れをしていたところ、退職後もその債務を引きずっているという方です。
このようなケースでは、年金生活を続けながら何十年にもわたり、少しずつ返済しているという方がいらっしゃいます。
そんな時、支給される年金の中から少しずつ返済していくのもよいですが、いっそのこと自己破産や民事再生の手続きを行うことにより、債務を大幅に減額するのも得策であるといえるでしょう。
ここでは年金受給者の自己破産等の債務整理について説明します。
このコラムの目次
1.どのような手続きをとるのが得策なのか
(1) 任意整理という手続き
債務整理の手続きの中には、弁護士が、裁判所などの機関を利用することなく、債権者と任意で交渉を行い、債務を将来利息なしで3~5年で弁済していく任意整理という手続きがあります。
もっとも、この手続きでは、将来利息はカットできても、元本の分割弁済は必須ですし、別に和解日までの経過利息の弁済は必要となることが多いので、年金受給者にはあまりおすすめの手続きとは言えないでしょう。
(2) 自己破産、個人再生
他方、法的手続きとしては、自己破産と個人再生の手続きがあります。
個人再生は、基本的には、債務額を5分の1程度まで圧縮できる手続きであり、自己破産では債務額をゼロにすることができます。
この点、年金受給者の方の収入は限られていることからすると、債務額をゼロにできる自己破産の手続きをとるのが得策であるといえるでしょう。
2.自己破産の手続きはどのように進むの?
(1) 委任契約により弁済をストップ
まずは、弁護士と自己破産の委任契約を締結していただくことになります。
この段階で、弁護士より、債権者に受任通知を発送いたしますので、以後、債権者への弁済はストップしていただいて大丈夫です。
その代わり、弁護士報酬の支払いを、通常1回~12回程度の分割払いで行っていくことになります。
(2) 報酬額の相場
弁護士に支払う報酬額は、通常25万円から35万円程度の場合が多く、管財事件の場合は、他に、管財人に支払う管財人報酬が必要で、これが20万円になります。
(3) 管財事件、管財人報酬、同時廃止とは
管財事件というのは、自己破産に際して、債務者の資産状況をチェックする管財人という裁判所から選任された弁護士が付される手続きのことをいいます。
どのような場合に管財人が付されるかというと、債務者に浪費があったり、家や車両などの有価値の資産がある場合に、破産者の資産をチェックしたり、破産者の生活の改善の指導を行ったりするために付されます。
この場合には、上述したように、弁護士報酬とは別に20万円が必要となります。
他方で、上記のような管財人が付されない簡易な手続きがあり、これを同時廃止の手続きと言います。
(4) 自己破産の申立て、その後の流れ
積み立てが完了した後は、自己破産の申立てを管轄の裁判所に行います。
その後の手続きの流れは次の通りです。
①同時廃止の手続き
同時廃止の手続きでは、申立て後、裁判所で書類の審査があり、同時廃止の決定が出ると、その2~4ヶ月後に免責審尋という手続きがあるのでこれに出頭し、手続き終了になります。
免責審尋の手続きでは、裁判官から債務増大に陥った理由、そのことについて今後どのような点を見直して行くのかの点について質問があり、その1週間後くらいに免責となるのが通常です。
②少額管財の手続き
少額管財の場合は、申立て後、2~4ケ月程度で債権者集会があり、通常、この手続きを1~3回程度経て、最終日に免責審尋も併せて行われ、手続き終了となります。
3.破産した場合に年金は差し押さえられることはないの?
ご安心ください。自己破産をしても受給している年金が差し押さえられたり、受給できなくなったりすることはありません。
これは、年金を受給できる権利が、法律上、差押禁止債権とされているため、たとえ、自己破産したとしても、これを差し押さえすることができないことによります。
もっとも、気をつけておかなければならない点があります。どういうことかというと、差し押さえが禁止されているのは、あくまでも年金の受給権だけですので、年金が銀行口座に振り込まれた後は、一般の預金債権と同様差し押さえの対象になるということです。
よって、銀行の預金として銀行口座にお金がある場合は、差し押さえの可能性があります。
なお、年金担保融資という制度があり、これが年金に付されている場合は、自己破産とは関係なく、年金支給額から一定額が天引きされ続けることになります。
ただ、この制度を利用されている方は少数です。
4.紛争解決事例のご紹介
依頼者(仮にAさんといいます。)は、長年、公務員として地方自治体で勤め上げ、60歳で定年退職した後は、以後10年間、専門分野を生かした教育関係の仕事に臨時職員として従事されておりました。
Aさんの在職中は、バブル期の真最中であったこともあり、会社の付き合いや酒食の機会も増え、豪遊を重ねてしまいました。そこで、膨らんだ債務額は数千万円に上ってしまいました。
この借金は、退職時に退職金でその多くを精算したものの、ちょうどそのころ、医療費もかさんだこともあり、数百万円の借金が残ってしまいました。
Aさんは、この借金を実に数十年にわたりコツコツ返済されておりましたが、齢80歳を超えたところで、そろそろ債務整理をと考えられ、泉総合法律事務所を訪問されました。
泉総合法律事務所では、自己破産(同時廃止)手続きで受任させていただきました。
幸い、弁護士報酬は親族の方が肩代わりしてくれましたので、速やかに、破産申し立てを行い、免責となりました。
5.年金受給者の方も泉総合法律事務所にご相談を
年金受給者の方でも債務を増大させてしまうことは稀なことではありません。
コツコツと返済されるのもよいですが、返済額が生活を圧迫している方は、自己破産を行うことにより、新しく人生を再スタートさせていくことも一つの解決策であるといえます。
年金受給者の方の債務の問題でお困りの方は、ぜひ泉総合法律事務所にお気軽にご訪問されることをお待ちしております。
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