個人再生をすると返済額はいくらに減る?
個人再生は、裁判所に申立てをして手続をし、借金を大きく減額してもらったうえで、残った借金を原則3年程度かけて毎月少しずつ返済していく債務整理です。
しかし、「借金を減らしてもらえると言っても、具体的にどのくらい減るの?」「個人再生した後の支払額ってどのくらいになるの?」と、疑問に思う人もいるでしょう。
ここでは「個人再生をするとどのくらい借金が減るのか?」ひいては「個人再生後の返済額はどれくらいになるのか?」を紹介していきます。
個人再生後の支払いに不安がある方や、個人再生による減額率を知りたい方は、ぜひご覧ください。
このコラムの目次
1.個人再生後の弁済額の決まり方
個人再生するといくら借金が減るのか、言い換えれば「支払額がいくらになるのか」については、以下3パターンの決め方があります。
(1) 債務額に応じた最低弁済額
まず、個人再生するときの債務額に応じて、「借金は減らしてあげるけど、最低これだけは支払ってくださいね」という額は、法律で決まっています。
- 債務額100万円以下:支払額=債務額(減額なし)
- 100万円~500万円:支払額は100万円
- 500万円~1500万円:債務額の5分の1
- 1500万円~3000万円:300万円
- 3000万円~5000万円:債務額の10分の1
大雑把ですが、債務額の5分の1〜10分の1程度が支払額になります。
借金を実質的に8割から9割カットできると考えれば、個人再生による債務の圧縮効果は非常に高いことがわかります。
一方で、債務額が100万円以下のときは借金が減額されないため、個人再生の意味がありません。
この場合は任意整理・自己破産など別の方法で債務整理をするべきでしょう。
なお、上記の債務額は過払い金などの引き直し計算後の金額がベースです。
また、住宅ローン特則を利用する場合は、債務総額から住宅ローンの残債務額を差し引いた金額が、個人再生で整理する債務の額となります。
(2) 清算価値
清算価値とは、簡単に言えば「自己破産したときに債権者に配当される金額」です。
債務整理には、個人再生の他に「自己破産」というものがあります。
自己破産は自分の一定以上の財産をお金に換えて債権者に弁済し、それでも残った借金については帳消しになるという手続です。
もし、個人再生によって、債権者が「債務者が自己破産したときよりも低額な支払い」しか受けることができなければ、債権者としては「どうせなら自己破産してくれた方がよかった…」と思うでしょう。
場合によっては個人再生に反対する可能性もあります(小規模個人再生の場合・後述)。
個人再生は債務者に有利な一方で、債権者の権利を大きく侵害する行為です。
少しでも債権者の権利を守るために、「最低でも清算価値と同額は弁済してくださいね」というルールが定められたと考えてください。
このとき、特に問題となるのが住宅や住宅ローンです。
清算価値には住宅の価値も含まれるので、住宅の価値が高いと清算価値が上がってしまいます。
また、アンダーローンといって、住宅ローンの残額よりも住宅の評価額の方が高い場合、その差の部分が資産とみなされるため、やはり清算価値が上がってしまい、個人再生後の支払額が高額になってしまいます。
マイホーム住宅を購入後に居住地が人気エリアになるなどして住宅の評価額が上がると、個人再生をするうえでは却って損になる可能性があるのです。
(3) 可処分所得の2年分
可処分所得とは、収入から税金や社会保険などの支払いを差し引いて、さらに生活維持費を控除して残ったお金のことです。
実際には様々な計算が必要ですが、要するに「税金や生活費以外の、自由に使えるお金」が可処分所得だと思ってください。
個人再生をした後は、可処分所得の2年分が支払額になることがあります。
2.実際の支払額
以上、3パターンの支払額を紹介してきましたが、具体的にどれが適用されるのでしょうか?
実は、個人再生には2種類あり、どちらの方法で行うかによって支払額は変わります。
それは、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」です。
- 小規模個人再生:債権者の反対があるとできないが、弁済額が安くなりやすい
- 給与所得者等再生:債権者の意向に関わらずできるが、弁済額が高くなりやすい
では、なぜ弁済額が変わるのでしょうか?
(1) 小規模個人再生の場合
この場合は「最低弁済額」と「清算価値」のどちらか高い方が最終的な弁済額になります。
保有している財産の額が多い場合は「清算価値」が優先して採用され、そうでない場合は最低弁済額が採用されるでしょう。
(2) 給与所得者等再生の場合
こちらの場合は「最低弁済額」「清算価値」「可処分所得の2年分」の中で、最も高額なものが最終的な弁済額になります。
このうち「可処分所得の2年分」が問題となることが多く、小規模個人再生よりも弁済額が上がる可能性があります。
3.少しでも返済額を減らしたい場合
個人再生をするのであれば、当然ですが、返済額が減った方がその後の生活が楽になるはずです。
「少しでも返済額を減らしたい」という人は、何をすればいいのでしょうか?
(1) 小規模個人再生を選ぶ
「可処分所得の2年分」が、3つのケースの中では最も高額になる可能性が高いため、給与所得者等再生ではなく小規模個人再生を選んだ方が返済額は少なくなりやすいです。
小規模個人再生は債権者の反対があるとできませんが、このときの債権者の同意は「消極的同意」の範囲で十分とされています。
消極的同意とは「積極的に反対はしない」ということであり、「賛成です」と手を挙げてもらわなくとも大丈夫ということです。
まずは小規模個人再生を選択して、債権者からの反対があったら給与所得者等再生に切り替えるなどするのがよいでしょう。
(2) 清算価値を減らす
債務額に応じた最低弁済額はなかなか減らすことができません。可処分所得についても対応は難しいでしょう。
現実的に可能なのは、清算価値を減らすことではないでしょうか?
例えば、高価な宝飾品や美術品、車などを売却するか他人に譲ってしまえば、自分の財産を減らすことになり、ひいては清算価値も下げられるはずです。
しかし、こういった行為は裁判所によって阻まれてしまいます。
個人再生のときには裁判所に財産を報告する必要がありますが、個人再生前の財産についても報告の必要があり、故意に清算価値を下げるようなことは認められていないのです。
下手に清算価値を減らそうとすると個人再生を認めてもらえないこともあるので、事前に弁護士に相談して「こういった行為は問題ないか?」と確認しておくことをおすすめします。
反対に、「これをすると却って返済額が上がるかもしれない」というNG行動はあるのでしょうか?
例えば、「特定の債権者にのみ有利になるような返済(偏頗弁済)」をすることです。偏頗弁済をすると、その金額が個人再生後の弁済額に上積みされることがあるため、最終的な弁済額が上がってしまい、大きな損を招くおそれがあります。個人再生では全ての債権者を平等に扱わなければならないことになっているからです。
また、清算価値を下げるために財産を隠し、裁判所に報告しないようなケース(財産隠し)も該当します。隠すのではなく、誰かに無償または通常よりも著しく低額で財産を譲った場合も問題です。処分したり譲ったりした財産の金額が個人再生後の弁済額に加算されてしまいます。
弁護士なら「何をしていいのか」「何をしてはいけないのか」を教えてくれるので、それに従えば個人再生を問題なくスムーズに進めることができます。
4.個人再生をお考えの方は弁護士にご相談ください
個人再生後の支払額はケースによって異なるので、具体的なこと・自分の場合はどうなるのか等を知りたい場合は、弁護士にご相談ください。
弁護士に依頼すれば、弁済額の見通しだけでなく、禁止行為・するべきことも教えてくれます。また、書類作成や裁判所の手続も代行してくれるでしょう。
個人再生を弁護士抜きでするのは、現実的に考えて非常に困難です。
弁護士に依頼して、可能な限り早く個人再生を終わらせることができれば、それだけ早く借金で苦しむ生活から脱却できます。
個人再生をお考えの方・借金問題でお困りの方は、泉総合法律事務所にご相談ください。
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