任意整理をした場合、退職金の取り扱いはどうなるのか?
債務整理をした場合に、退職金がどういう扱いを受けるかご存知でしょうか。
自己破産の場合も個人再生の場合も、退職金は支給されたものと仮定して、その一部が債権の弁済に組み入れられてしまいます。
では、任意整理の場合はどうなるのでしょうか。
ここでは、任意整理と退職金の関係について解説します。
1.任意整理の性格
任意整理は債務を減額する制度です。
任意整理における減額は、主に将来利息をカットする形で行われます。
また、弁済期間を延長するなどして、無理なく返済できるよう、債権者と債務者の代理人である専門家が協議します。
任意整理はあくまでも債権者・債務者間の任意の示談交渉であり、裁判所など公権力を介すことなく手続きをすることが可能です。
2.退職金の扱い
自己破産・個人再生の場合のように、退職金を弁済に充当しなければならないような義務はない
債務整理にはいくつか種類があり、自己破産をする場合は、退職金を弁済にあてる義務があります。
また、個人再生の場合、退職金は清算価値とみなされ、最低弁済額が高くなる可能性が高いです。
退職金については、現在受け取っている場合はもちろん、将来受け取る分も財産とみなされます。
今後も引き続き働く予定の場合は、現時点で退職した場合に受け取れる退職金見込み額の1/8の額が、弁済に充てる財産としてカウントされます。
ただし、自己破産については退職金の1/8の額が20万円以下の場合は没収対象とはなりません。
一方、任意整理の場合は、退職金を弁済に充てる義務はありません。
将来的に多額の退職金をもらう予定があっても、現状借金を返せない場合は、任意整理に踏み切っても何ら影響はないのです。
債務者の意思で退職金を弁済に充てることは可能
任意整理では退職金を弁済に充てる義務はありませんが、債務者が自分の意思で、退職金で弁済することは可能です。
例えば、100万円の債務があり、半年後に退職金を500万円受け取れる予定であれば、債権者との合意が前提ですが、退職金を原資として半年後に100万円を一括返済するという内容で和解することも考えられます。
また、当面は毎月2万円ずつ返済し、残りの90万円を半年後に退職金から支払うという内容で決着をつけることもあり得ます。
債権者としては、返済額を減らされるより、退職金を返済に充てて貰う方がありがたいので、将来の退職金を返済原資に充てることについては、むしろ喜んで応じてもらえる可能性が高いでしょう。
3.任意整理と退職
では、任意整理後に退職をして収入がなくなった場合はどうなるのでしょうか?
結論から言うと、退職して収入がなくなり、和解内容に従った支払いができず滞納すると、借金残額の一括返済の請求をされることになります。
任意整理後は計画通りに返済することが大前提です。
そのため、収入がなくなって和解内容通りの支払いができない場合は、任意整理は取り消され残債の一括返済を求められます。
ただし、滞納が1・2カ月であれば、債権者に事情を相談すれば許してもらえる可能性もあります。
そのため、もし延滞になる場合は、前もってその後の支払いの見込みなどをしっかりと伝えましょう。
誠意を持って臨めば、話し合いに応じてもらえることもあるので、状況が悪化しないうちに手を打つことが肝心です。
しかし、退職によって今後の収入が全く見込めない場合、任意整理は取消されます。
その後、再び任意整理するのは難しく、個人再生も収入がないと手続きはできません。
よって、その場合、最終的に自己破産を選択することになります。
自己破産というと非常にネガティブなイメージもありますが、没収対象となる財産がなければ、デメリットは他の債務整理と実は大差ありません。
また、任意整理の場合は借金の減額だけですが、自己破産であれば借金は全額免除してもらえます。
状況によっては、自己破産の方がメリットの多いケースも少なくありません。
そのため、任意整理後に支払いに窮しても、決して悲観せず、できるだけ早く専門家に相談することをおすすめします。
4.まとめ
任意整理をするには、無理のない和解内容に合意できるかどうかが肝心です。債務整理をする前に専門家に相談しましょう。
泉総合法律事務所にご相談いただければ、債務整理の専門家である弁護士が状況に応じてベストな債務整理の方法を提案させていただきます。
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