刑事事件

警察から暴行罪で呼び出しを受けた場合拒否できるの?

「昨晩酔っ払って路上で喧嘩をしてしまい、警察を呼ばれたがその場では軽く説明しただけで解散した。しかし、数日後警察から暴行事件についての話を聞きたいから警察署に来てくれないかとの連絡が入った…」
そんな場合、必ず警察署に行かなければならないのか?自分は逮捕されてしまうのか?と不安になると思います。

ここでは、暴行罪で警察に呼び出しを受けた場合にどうするべきか、逮捕されたらどうなるのか等について解説します。

1.暴行罪で警察から呼び出しをされる場合

警察から呼び出しを受ける場合としては、以下のものが考えられます。

(1) 参考人としての呼び出し

参考人とは、犯罪事実や被疑者について知っていると考えられる者を指します。
参考人呼び出しは、犯罪の被害者や、暴行事件の現場にいたとか、被疑者と関係のある人物である等、暴行事件の情報を第三者から得たい場合に行われます

刑事訴訟法223条は、「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者以外の者の出頭を求め、これを取り調べ、又はこれに鑑定、通訳若しくは翻訳を嘱託することができる。」としています。

参考人は犯罪を犯したと疑われているわけではありません。しかし、実際には、犯罪を犯した疑いがある場合にも参考人として呼び出される場合もあります。

(2) 被疑者としての呼び出し

被疑者とは、犯罪を犯した疑いがある者を指します。暴行罪でいうなら、暴行を行った人を指します。

刑事訴訟法198条は、「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。」としています。

暴行罪とは】
なお、暴行罪は、「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」に成立します(刑法208条)。典型的なのが、相手を殴る蹴るなどした場合です。また、暴行を加えて相手に怪我を負わせた場合は、暴行罪ではなく、傷害罪が成立します(刑法204条)。
暴行罪を犯した場合は、「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」、傷害罪を犯した場合は、「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」に処されます。

2.呼び出しを無視するとどうなるのか

参考人・被疑者としての呼び出しどちらの場合でも、「被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。」とあるように、警察署へ行くのを拒否することは可能です。そして、これを拒んでも、罰金等の刑罰を科されることもありません。

もっとも、犯罪を犯したと疑われている者が、警察からの呼び出しを拒否すると、逃亡の恐れや証拠隠滅の恐れがあるとして、後に逮捕される可能性があります。

逮捕とは、被疑者に対する短期間の身体拘束を言います。

逮捕には、通常逮捕、現行犯逮捕、緊急逮捕の種類があります。警察からの呼び出しを無視した場合に行われるのは、この内の通常逮捕です。
警察が、呼び出しを拒否した被疑者を逮捕しようと考えた場合、この通常逮捕が行われます。

通常逮捕を行うには、警察官が裁判官に対して、逮捕状(令状)の請求を行います。請求を受けた裁判官は、被疑者が罪を犯した疑いがあるか、逮捕の必要性があるか等を審査し、逮捕状の発行をするか否かを判断します。

逮捕状が出された場合、警察官は逮捕状を持って、被疑者の元へ行きます。そして、逮捕状を被疑者に提示して逮捕を執行します。この場合は、任意の呼び出しとは違って、拒否することはできません。

3.暴行罪で逮捕された後の流れ

仮に、呼び出しを受けた被疑者が逮捕された場合、身体拘束された被疑者は、警察署に連れて行かれます。

警察署においては、警察官から犯行についての取り調べをうけることになります。そして、警察官は逮捕から48時間以内に、被疑者の身柄を送検(検察官に被疑者の身柄を証拠と共に送ること)する、あるいは、被疑者を釈放するか否かを判断しなければなりません。

釈放される場合としては、暴行に関与した嫌疑が晴れた、微罪処分(一定の要件を満たした場合に被疑者の刑事手続きを終了させること)等が挙げられます。

送検されると、被疑者は検察官のもとに移ります。そこで検察官は、①被疑者の身柄を受け取ってから24時間以内、かつ②逮捕から72時間以内に、裁判官に被疑者の勾留(長期の身体拘束)を請求するか釈放するか判断しなければなりません。

裁判官に勾留を請求し、これが認められると、被疑者は逮捕に続き勾留されることになります。勾留期間は勾留請求された日から10日です。捜査の必要がある場合、更に最大で10日の勾留延長が行われることがあります。

検察官は、捜査を通じて獲得した証拠を基に、被疑者を起訴するか否かを決定します。起訴の判断が下されると裁判が始まることとなります。

【略式起訴について】
検察官が起訴の判断をすると裁判が始まると述べましたが、起訴には2種類あります。皆さんが想像する公開の法廷で行われる正式起訴と、簡略な手続による罰金刑を受けることになる略式起訴で、後者は公開の法廷で行われません。略式起訴は罰金刑が含まれる犯罪を対象にしていますが、暴行罪は罰金刑が法定刑に含まれているので略式起訴となる可能性があります。
なお、正式起訴で有罪判決を受けた場合も、略式起訴で有罪判決を受けた場合も、同じ有罪判決です。そのため、前科(有罪判決を受けた経歴)は略式起訴で有罪判決を受けた場合にも付きます。

4.暴行罪を犯した場合は示談が重要

暴行罪を犯した場合、被害者と示談をすることが重要です。示談とは、犯罪についての解決を表す加害者と被害者の合意を言います。示談が重要なのは以下の理由によります。

(1) 早期釈放が見込める

仮に、被疑者が逮捕されてしまった場合、被害者と示談を成立させることで、逮捕から解放される、あるいは逮捕後の勾留請求が行われない可能性が高まります。

(2) 不起訴の可能性が高まる

検察官は、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができ」ます(刑事訴訟法248条)。

被害者と示談が成立することは、検察官が公訴を提起しない(不起訴にする)方向に働く事情です。

(3) 起訴されても量刑で有利になる可能性

被疑者に前科・前歴があるとか、暴行の態様が悪質であった場合は、示談が成立していても、検察官が公訴を提起することもあります。

もっとも、裁判における量刑判断において裁判所は、様々な事情を考慮します。被害者との示談の成立は、量刑判断において、被告人に有利に働く事情です。

そのため、略式起訴となって罰金刑になったり正式起訴の場合でも、有罪判決でも量刑が軽くなったり、執行猶予が付いたりする可能性が高まります。

5.暴行罪の示談は弁護士に相談を!

警察からの呼び出しを受けた場合、どうすべきかの判断は非常に迷うと思います。そのため、弁護士に一度相談してみることをお勧めします。弁護士は、相談者の具体的な事情に沿って、適切な助言をしてくれます。

示談交渉は、加害者と被害者の間で行われます。暴行事件の当事者同士のため、冷静な話し合いができず、示談が成立しないといった事態になりかねません。

また、暴行罪における示談金の相場は一般の方には判断できないものです。
特にケンカに伴う暴行行為では、次のような、被害者の請求する示談金を減額するべき事情があるケースが多いのです。

  • 被害者の暴言が加害者の暴力を招来したケース
  • 被害者は(自身は暴力を振るっていないが)、加害者の喧嘩相手の仲間として現場で喧嘩を応援していたケース
  • 被害者も加害者に暴力を振るおうとしていたが、たまたま先に加害者のパンチが被害者にあたって転倒したため暴力を振るえなかったケース

このようなケースで減額を求めるべきか、その場合いくらの減額を求めるかなどは、法律に精通した弁護士でなければ困難といえます。

以上のことから、暴行罪の示談交渉は弁護士に依頼することをお勧めします。

警察から呼び出しを受けた場合、あるいは呼び出し後に逮捕されてしまった場合、一人でできることは限られます。
そんな時は、ぜひ、刑事問題に精通した泉総合法律弁護士にご相談ください。

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