津田沼の債務整理で給与の差し押さえを回避する方法
貸金業者(消費者金融)から借りたお金を長期に渡って返さないと、支払督促や判決等の債務名義を取られ、その上で、財産を差し押さえられる可能性があります。このとき、債権者が差押の対象に選ぶ主な財産の1つが債務者の給与です。
給与を差し押さえられた場合、手取りの収入が減少してしまいますので、生活へ直接的な影響が及びます。
また、給与の差し押さえに当たっては、裁判所の出した差押命令が勤務先に届きますので、勤務先に借金の存在がばれてしまいます(借金を直接の理由として勤務先をクビになることはないにしても、勤務先に居辛くなってしまうことがあるでしょうし、勤務先のお金を扱う重要な仕事を任せて貰えなくなる等の仕事の内容への影響や、昇進・昇給への影響なども考えられます)。
ここでは、「債務整理」により、給与差し押さえを回避する方法を、習志野市津田沼の弁護士が解説します。
長らく借金を滞納してしまっている方や、もうすぐ給与が差し押さえられそう(差押予告通知や支払督促を受け取った)だという方は、是非ご覧下さい。
このコラムの目次
1.給与が差し押さえられる理由
(1) 差し押さえとは
例えば、住宅ローンなどを組む際には、その住宅の土地に担保権(抵当権)を設定します。住宅ローンが払えなくなった場合、その土地は、債権者によって、担保権に基づき処分(競売)されてしまいます。
また、主債務者が支払いを出来なくなってしまった時のために、人的な担保として、連帯保証人を指定しなければならないこともあるでしょう。
しかし、消費者金融でお金を借りる場合は、このような「担保」を設定していないことがほとんどでしょう。
では、消費者金融への返済を怠った場合にどうなるのかというと、貸金業者は、あなたの資産を特定した上で、強制執行をかけてきます。
強制執行の対象となる資産には、土地や建物、車といった物(動産・不動産)のほかに、預貯金や給与などの債権(預貯金の場合は、金融機関に対して預貯金の払戻しを求める権利のことであり、給与の場合は、勤務先に対して給与の支払いを求める権利のことです)が含まれます。
「何の目ぼしい資産もないから、強制執行されても、持って行かれるものは何もない」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、働かれている方は、「給与債権」という資産を常に持っている状態なのです。
業者からお金を借りるときに、申込書に勤務先の名前や住所を書きませんでしたか?
これは、貸した相手がお金を返さない場合に、その人の給与を差し押さえるためのものです。
(2) 差し押さえまでの流れ
あなたが支払いを怠った場合、貸金業者は、まずは、電話や手紙で、支払うように督促してきます。
それでも支払わない場合には、今度は、貸金業者から裁判を起こされる可能性があります。
貸金業者から訴訟を起こされた場合には、何もしないと負けが確定してしまいます。
また、貸金業者の訴えの内容に争う部分がない場合は、和解による解決を図るならともかく、それも難しいようならば、結局は敗訴の判決で終わることになるでしょう。
貸金業者が裁判に勝った場合、貸金業者は勝訴判決を得て、この判決を根拠として、債務者の財産の差し押さえを実行することが出来ます。
このように強制執行の根拠となる文書のことを債務名義と呼びます。判決や支払督促、和解調書のような裁判所が関与して作成される文書だけでなく、公証役場で作られる強制執行受諾文言付きの公正証書も債務名義の一種です。
つまり、返済を滞納したからといって、ある日突然財産が差し押さえられるということではなく、実際に貸金業者が財産の差し押さえに至るまでには、ある程度の段階を踏む必要があるということです(ただし、公租公課を滞納している場合は、裁判等を経ずに直接財産を差し押さえされてしまいますので、注意してください)。
なお、裁判は手間もお金もかかるため、通常は「支払督促」を裁判所から送付をしてもらうことで、勝訴判決に代える手続が多いです。
2.給与差し押さえを回避する方法
当然ですが、滞納している債務を全て弁済すれば、差し押さえはされません。
しかし、長期にわたり借金を滞納してしまっている方にとって、それは現実的ではないでしょう。
一括弁済以外で差し押さえを回避するには、債権者と分割払いの交渉をするという手もありますが、借金の根本的解決を目指すのならば、弁護士に相談をして自己破産や個人再生などの債務整理手続を行うことがお勧めです。
(1) 自己破産
自己破産の手続には、「管財事件」と「同時廃止」の2種類がありますが、給与に対する強制執行手続の取り扱い、よりわかり易く言えば、「いつの時点から再び給与が満額受け取れるようになるのか」は、両者で異なっています。
管財事件
まず、管財事件と強制執行手続の関係について説明します。
自己破産の場合、「破産手続を開始します」という破産開始決定が裁判所から出されれば、その時点で、破産者を当事者とする破産財団に関する訴訟手続は中断します(破産法44条)。
強制執行(差押)手続に関しても、破産開始決定が出た後で、新たに破産財団に属する財産に対して強制執行を行なうことは出来ず(破産法42条1項)また、既に破産財団に属する財産に対して強制執行がされている場合も、破産開始決定により、その強制執行は、破産財団に対して効力がなくなります(破産法42条2項)。
さらに、破産債権は、法律に特別の定めがある場合を除き、破産手続によらなければ行使出来ないとされているので(破産法100条)、債権者は、破産財団に属しない財産=破産開始決定後の給与を差し押さえることも出来ず、あくまで破産手続内の配当から回収をするしかありません。
このように、管財事件の場合は、既にされている給与差し押さえの手続は、破産開始決定の時点で「失効」します。
「失効」とは、従前の差押手続がきれいさっぱり無くなるということです。
そのため、仮に、その後、免責が不許可に終わり、債務が残った場合でも、債権者は、最初から差押手続をやり直す必要があります。
ただし、開始決定の時点で失効すると言っても、強制執行手続が係属する裁判所(執行裁判所)と破産手続が係属する裁判所は別の裁判所なので、開始決定が出た事実を執行裁判所へ別途連絡しなければ、強制執行がそのまま続いてしまいますが、この連絡は破産管財人が行なってくれます。
同時廃止
これに対し、同時廃止の場合は、破産手続自体は開始と同時に廃止されます。
よって、このままだと、破産手続の存在を前提とした破産法100条の制約はかからないので、債権者がその後に強制執行を行なうことまでは止められないことになります。
しかし、これでは破産者の生活への影響が大き過ぎることから、現在の破産法では、同時廃止の場合は、免責の許可・不許可の結論が出るまでの間は、既にされている強制執行手続については「中止」するというルールになっています(破産法249条1項)。
ただし、「中止」は、あくまで一時的なものであり、最終的に免責が許可されれば、免責許可が確定した時点で、強制執行手続は「失効」となりますが(破産法249条2項)、万一、免責が許可されなければ、一旦中止していた強制執行手続が再開されることになります。
なお、強制執行手続が中止されている期間中の差押分の給与は、破産者にも差押債権者にも支払われずに勤務先に留保されている状態であり、免責の可否の結論が出た時点で、勤務先から破産者(免責許可の場合)あるいは差押債権者(免責不許可の場合)に対して、留保分の給与が纏めて引き渡されます。
このように、破産開始申立をすれば、その後の給与を差し押さえられるリスクを回避することができ、また、現在行なわれている差押手続を失効・中止させることも出来ます。
実際、当事務所にご依頼頂いた案件でも、受任後に債権者から訴訟を提起されてしまったケースで、緊急に自己破産を申し立てたことで給与差し押さえを回避したことがございます。
(2) 個人再生
まず、訴訟手続との関係で見ると、個人再生の場合には、手続が開始されても、既に貸金業者から起こされている訴訟手続は中断しませんし、開始決定が出た後で訴訟を起こすことも認められています(民事再生法238条、245条、40条)。
けれども、仮に判決を取られたとしても、既に再生手続が開始している場合には、債権者は、新たに強制執行を行なうことは出来ませんし、既に開始されている強制執行手続も、開始決定の時点で当然に「中止」されます(民事再生法39条1項。もっとも、当然に中止と言っても、実際に中止するには、開始決定が出た事実を執行裁判所に別途連絡して手続をする必要があることは、自己破産の場合と同様です)。
また、個人再生の申立てを行なえば、開始決定の前であっても、裁判所は、必要があると認めるときは、申立又は職権により、既に係属中の強制執行手続を中止する(中止命令を出す)ことが出来ます(民事再生法26条1項。裁判所から中止命令が出たら、それを執行裁判所に別途提出した上で、強制執行を停止して貰う必要があります)。
ただし、再生手続の開始決定が出た時点では、既に係属中の給与差押手続は、あくまで「中止」されるにとどまり、その後、再生計画の認可決定が確定した時点で、差押手続は「失効」となります(例外として、裁判所が強制執行の「取消」命令を出せば、再生計画の認可決定の確定を待たずに、差押手続は取消=解除されますが、ハードルは高いと言えます)。
逆に、再生計画が認可されずに再生手続が終了した場合は、一旦中止していた差押手続が再開されることになります。
開始決定により差押手続が中止して以降の差押分の給与は、再生債務者にも差押債権者にも支払われずに勤務先に留保され、手続終了後に、勤務先から再生債務者(再生計画が認可された場合)あるいは差押債権者(再生計画が認可されなかった場合)に対して、留保分の給与が纏めて引き渡されることになります。
なお、既に行なわれている給与差押手続を、破産・再生手続を行なうことによって失効・中止させるためには、その時点で、破産・再生手続を行なっている事実が、裁判所から勤務先に伝わってしまいます。
ですので、どうしても勤務先に破産・再生の事実を知られたくないという場合は、給与差し押さえが現実に始まるより前に手続を進める必要があります。
3.給与差し押さえの回避は泉総合法律事務所へご相談下さい
生活の基盤である給与が差し押さえられると、様々な問題が生じます。
給与が差し押さえられてしまう前に、出来るだけ早く、借金問題は弁護士に相談することをお勧めします。
泉総合法律事務所津田沼支店では、債務整理の案件数が多数ございます。給与の差し押さえを回避した経験も豊富ですので、どうぞ安心してご相談頂ければと思います。
習志野市、船橋市、八千代市、鎌ヶ谷市、市川市、千葉市花見川区・美浜区、JR総武線や新京成電鉄線沿線にお住まい、お勤めの方で、給与差し押さえを回避したいという方は、是非、泉総合法律事務所津田沼支店へ、ご遠慮なくお問い合わせ下さい。
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