刑事事件

盗撮事件の慰謝料相場はどのくらい?示談金と慰謝料の違いも解説!

電車内やエスカレーターで盗撮を行い、被害者にばれてしまった。
盗撮で警察に捕まったり、起訴されたりするのを防ぐために、被害者から許しを得たい。

この場合、被害者に一定の慰謝料を払って示談をすることになります。

しかし、慰謝料といっても、どのくらいかかるかわからないため、非常に不安だ、と考える人が多いと思います。

盗撮事件を起こした場合の慰謝料額はどのくらいなのでしょうか?
ここでは、盗撮における慰謝料の相場について説明します。それと共に、盗撮を規制する法律や、示談金と慰謝料の違いも、まとめて解説します。

1.盗撮を規制する法律

まずは、盗撮を処罰する法律について説明します。盗撮を規制する法律は、主に各都道府県が定める迷惑防止条例軽犯罪法、刑法の住居侵入罪です。

千葉県の迷惑防止条例「何人も、女子に対し、公共の場所又は公共の乗物において、女子を著しくしゅう恥させ、又は女子に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない。男子に対するこれらの行為も、同様とする。」と定めています(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例3条2項)。

ここでは、あくまでも「卑わいな言動」が処罰対象ですから、典型的には、女性の胸や尻に顔を近づけたり、わいせつな言葉を投げかけたりする行為が禁止されているのであって、「盗撮」すなわち被写体から承諾を得ていない撮影行為一般を禁止しているわけではありません。

しかし、例えば、ショッピングセンターで女性の背後を執拗に付け狙ったうえ、至近距離から、携帯のカメラでズボンの臀部を多数回にわたり撮影する行為を「卑わいな言動」にあたるとした最高裁の判例(※)があるように、撮影行為の具体的な態様によっては、それが「卑わいな言動」と判断される可能性があるのです。
千葉県と同様の規制をしている北海道の迷惑防止条例違反に関する最高裁平成20年11月10日決定

したがって、電車内でスカートの下にスマホを差し入れて下着を撮影する行為などは、まさに卑わいな言動として、この条例で罰せられ、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます(13条1項)。

軽犯罪法は、「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見」る行為を規制しています(軽犯罪法1条23号)。

これは正当な理由のない「のぞき見」行為を処罰するもので、盗撮目的での「のぞき見」行為がこれに違反することは明らかです。

その違反は拘留(1日以上30日未満の身体拘束)又は科料(1000円以上10000円以下の罰金)に処されます。 

また、盗撮行為をする目的で人の住居等に侵入した場合、住居侵入罪(刑法130条)が成立します。住居侵入罪は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処されます。

2.慰謝料とは

慰謝料は示談をする際に払われる金銭です。そのため、まずは示談について説明します。

(1) 示談とは

示談とは、被害者と加害者の間において事件を解決済みとし、許しを得る合意です。多くの場合、加害者から被害者に対して金銭が支払われる代わりに、被害者は加害者を許すという合意がなされます。

示談が成立すると当事者間の賠償問題は解決済みとなり、加害者がそれ以上の民事責任を負うことはなくなります。

刑事手続きにおいては、示談の成立が被疑者に有利な事情となり、検察官による起訴を免れる(不起訴処分となる)可能性が高くなります。

(2) 慰謝料と示談金の違い

慰謝料とは、加害者が被害者に与えた精神的損害に対して払う金銭のことです。

他方、示談金は、加害者が被害者に与えた財産的損害(壊れた財産の修理代、治療費、休業損害等)、精神的損害に対して払う損害賠償金の全体を言います。

以上からわかるように、必ずしも示談金=慰謝料ではなく、示談金の中に慰謝料が含まれることになります。

示談金の中に財産的損害に対する補償が含まれる場合として、例えば、窃盗の場合(被害品の価額)、あるいは、被害者に暴行を加え、全治一ヵ月の傷害を負わせた場合(被害者の通院費、傷害の程度によっては入院費等)が挙げられます。

他方、精神的損害に対して払う慰謝料は、被害者が存在する全ての犯罪において要求される可能性が存在します。

以上のように、慰謝料と示談金は意味が異なりますので、ご注意ください。

3.盗撮における慰謝料の相場

(1) 盗撮における示談金の内訳

上述の通り、慰謝料と示談金は同一のものではありません。

もっとも、盗撮においては、示談金=慰謝料と考えても差し支えありません。というのも、盗撮においては財産的損害がないことが通常だからです。

(2) 盗撮における慰謝料の相場

慰謝料は、物の修理費用や治療費のように客観的に算定されるものではなく、基準となるものがありません。いくら受け取れば精神的に慰謝されるのかは被害者によって異なるからです。もっとも、おおよその相場はあり、幅はありますが、盗撮の慰謝料はおよそ30万円前後と言われます。

盗撮の慰謝料額を左右するのは主に次の要素です。

  • 犯行目的、犯行態様の悪質性
  • 被害者の処罰感情の強弱
  • 被疑者の支払能力
  • 被害者が20才未満か否か

犯行目的が画像をネットなどで販売、流布することにあった場合などは、悪質なものとして高額な慰謝料を要求されるでしょう。

盗撮行為が同一の被害者に対して繰り返し行われた場合や住居侵入を伴うようなケースでも、悪質な犯行態様を理由に慰謝料額が高くなるでしょう。また、被害者が20才未満の場合は交渉当事者が両親となるたえ、慰謝料額が高くなる傾向があります。

そして、示談の内容は、被害者と加害者の交渉で決まりますから、処罰を求めている被害者を納得させうる金額か否か、被疑者が支払うことができる金額はいくらかという問題が大きく影響します。

4.示談を弁護士に相談すべき理由

前述の通り、示談を行うと起訴処分を回避できる可能性が高まるなどの利点があります。

示談交渉を行うことは当事者同士でも可能です。しかし、当事者同士の示談交渉が行われることは少なく、また適切とは言えません。弁護士に示談の依頼をすることをお勧めします。

それは以下の理由によります。

(1) 被害者が加害者と会うのを拒む

まず、示談するには被害者とのコンタクトを取る必要があります。
しかし、盗撮事件では、被害者が加害者に会いたくないと考え、示談交渉を拒絶することがあります。

会わなくとも、電話やメールなどを用いれば良い!とお考えになるかもしれませんが、被害者や警察が加害者に電話番号やメールアドレスを教えることはありません。
そのため、そもそも示談交渉に至らないという事態になってしまいます。

一方、弁護士に依頼した場合、被害者が弁護士となら交渉を考える、といったことが多々あります。被害者が弁護士に連絡先を教えることに同意すると、弁護士は被害者の連絡先を知ることができます(この流れは、警察や検察を通して行われます)。

なお、弁護士が警察らから被害者の連絡先を知るに際しては、加害者本人には連絡先を教えない、といった条件がつけられることが一般です。

(2) 示談書の作成方法がわからない

示談をする際には、示談の対象となる事件の記載、被害者が加害者を許すこと、示談金の額等が記された示談書を作成します。
しかし、一般の方は、示談書の作成で何をどのように書いたらいいかわからないのが通常です。

他方、弁護士は、状況に応じて何を示談書に織り込むか、また、どのような記載が適切かを熟知しています。被害者が示談に応じる気持ちになったなら、その機を逃さず、その場で直ちに示談書を作成して話をまとめてしまうことが可能です。

(3) 高額な示談金を求められる

先述したように、盗撮における示談金の中身は慰謝料がほとんどで、これは被害者の心情や加害行為の態様を考慮して決定されます。慰謝料は客観的に何円!といった性質のものではありません。
そのため、被害者(又は被害者の代理人弁護士)から、莫大な慰謝料を請求されることもあります。

その場合、自分に弁護士が付いていないと、どのような場合にどのくらいの慰謝料がかかるのか目安がつかず、相手方の法外な要求をそのまま呑んでしまうといった事態になってしまいます。

一方、弁護士に示談を依頼すると、適切な慰謝料額を判断できますので、過大な要求に屈することなく交渉を進めることができます。

5.まとめ

盗撮行為での起訴を回避するためには、慰謝料を支払い、示談を成立させることが重要です。

早期に、適切な慰謝料で示談を成立させるためには、弁護士へご相談ください。

津田沼市における盗撮事件の刑事|弁護示談での解決に向けて

[参考記事]

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