会社が倒産した場合の社長・代表取締役の責任とは
会社の経営が破綻してしまった場合に、すべてを清算してやり直すためには、主に3つの方法があります。
それは、破産(倒産)・特別清算・民事再生法による再生手続きの3つです。
これらの方法のうち、破産という選択をした場合、経営者は、従業員や取引先などへ与えてしまう影響を懸念し、育ててきた会社を清算しなければならないことに対する辛い思いを抱えることでしょう。
そして、その上、会社が破産すれば、社長などの代表者個人も破産することになるのではないかといった懸念も生じると思います。
では、会社が破産した場合に、社長などの代表者は、どこまで責任を負うものなのでしょうか。
ここでは会社が破産した場合の代表者の責任について解説していきます。
このコラムの目次
1.会社の破産とは
破産は、清算型の手続きの中でも、非常に多く利用されている手続きです。
会社の破産とは、支払い不能や債務超過にある会社について行われるもので、会社に残っている全財産を裁判所で選任される破産管財人が処分し、すべての債権者に平等に分配する手続きをいいます。
破産は、債権者又は債務者(会社側)から申し立てることができますが、債務者(会社側)から申し立てる破産については、自己破産と呼ばれています。
なお、破産管財人には、一般的には弁護士が選任されるので、会社の代表者がその任務にあたることはありません。
しかし、代表者は、破産手続きにおいては、破産管財人に協力する必要はあります。
また、会社の破産手続きの特色としては、主に次の3点があげられます。
債務者である会社は、財産の管理処分権を失う
破産手続きでは、破産管財人が会社の財産の管理処分権を持つので、会社は財産の管理処分権を失います。
会社は手続き終了後消滅する
会社のすべての財産を債権者に分配するので、会社は、破産手続き終了後は消滅します。
公租公課(税金や社会保険など)の分配が優先される
債権者に分配される際には、税金などの公租公課の支払いについては、優先されます。
2 .必ずしも「会社の破産=代表者個人の破産」ではない
会社は、そもそも「法人」として、法律上では「人」とは別の人格の「法人格」を与えられている存在として捉えられるものです。
つまり、たとえ会社の代表者である社長であっても、社長個人と法人は、あくまでも別人格として切り離して考えます。
したがって、会社が破産した場合でも、代表者個人は会社の債務を負うわけではなく、会社が消滅すれば、その債務も消滅するのが原則です。
つまり、「会社の破産=代表者個人の破産」ではないのが原則です。
しかし、例外として、代表者が責任を負わなければならない場合があります。
その例外について、次に見ていきましょう。
3.代表者個人が会社の債務について責任を負う場合
本来、代表者個人とは別人格として考える会社の債務について、代表者が責任を負う場合とは、どのような場合なのでしょうか。
責任を負うことになりえる場合には、主に次のようなものがあります。
(1) 代表者が会社の債務の連帯保証人になっている場合
会社の資金調達などのために金融機関から融資を受ける際には、社長などの代表者が会社の債務の連帯保証人になることを求められる場合が多いものです。
このように代表者が会社の債務の連帯保証人になっている場合には、代表者は、連帯保証をした債務については、支払い義務が生じます。
例えば、会社と金融機関の間で、会社は、1億円を借り、金融機関に対し1年ごとに1,000万円ずつ返済するといった内容の契約を結んだとします。
そして、社長は、その債務についての連帯保証人になったのですが、会社が金融機関に2,000万円返済した時点で会社が破産することになったとします。
この場合、会社は返済することができなくなってしまったので、金融機関は、連帯保証人である社長に支払いを求めることになります。
しかし、多くの場合、金融機関から借り入れる契約の際には、会社が破産などで返済することができない確定的な事情が生じた場合には、返済時期を待たずに連帯保証人に請求できる旨の特約を結んでいます。
ですから、社長は、連帯保証人として1億円のうち、返済が終わっていない8,000万円を返済しなければなりません。しかも、1年ごとに1,000万円ずつ返済するのではなく、すぐに8,000万円全額の支払いを求められることになります。
このように、代表者が会社の債務の連帯保証人になっている場合には、一度に返済しなければならない額が高額になることもあり、返済できず、代表者自身も破産を申し立てることが非常に多くなります。
(2) 会社経営において代表者が負うべき義務に違反した場合
代表者は、善管注意義務や忠実義務といった義務を負っています。
分かりやすくいえば、会社に対して、通常会社の代表者として期待される注意義務を怠ってはならないというものです。
そして、この義務に違反した場合には、会社に対して損害賠償責任を負うことがあります。
具体的には、代表者が、経営判断をする際に必要な調査を何もせずにそのままにしておいた場合や代表者個人の利益のために会社に損をさせた場合などには、損害賠償責任を追及される可能性があるということです。
また、会社に対して損害賠償責任を負うだけでなく、第三者に対して損害賠償責任を負うこともあります。
具体的には、決算書などに虚偽の記載をして投資を募り、第三者から資金集めをした場合や、会社の不利益になることを知りながら第三者と売買などの取引を行った場合などには、第三者に対しても損害賠償責任を負うことがあるということです。
では、経営に失敗してしまったというだけで、損害賠償責任を負わなければならないのでしょうか。
ここで注意したいのは、通常の経営判断のミスは、義務違反にはならないということです。
そうでなければ、経営者は、経営判断をすること自体が怖くなり、会社の活性化、ひいては社会全体のためになりません。
ですから、単に経営に失敗してしまったというだけでは、代表者に損害賠償責任は生じないのです。
(3) 破産管財人により否認権が行使される場合
破産管財人は、会社の財産を平等に債権者に分配するために、その財産を管理処分する権限があります。
しかし、破産手続きを行う前の段階で、会社が、会社の財産を減少させる行為をしたり、一部の債権者に対してのみ返済する行為をしたりすると、債権者に対して平等に分配することができなくなってしまいます。
そのため、破産管財人には、破産手続きを行う前になされたこれらの行為の効力を否定して、流出した財産を戻す否認権が認められています。
例えば、会社が破産する前に、会社の財産を代表者又はその妻などの親族の名義に移しておいた場合などには、破産管財人は否認権を行使して、その財産の返還や金銭の支払いなどを求めることができます。
破産管財人により否認権が行使された場合には、代表者はその責任を負わなければならない可能性が生じます。
4.会社の倒産は泉総合法律事務所へご相談下さい
代表者が過度の責任を負わないために、いくつか注意すべき点があります。
まずは、破産するからといって、会社の財産を正当な理由なく、代表者や親族等の名義に移してしまわないように注意すべきです。
この行為は、前述した破産管財人の否認権の対象になるだけでなく、刑罰を受ける可能性もあるためです。
そして、会社に対して債権を持つ特定の取引先や親族にのみ、支払わないように注意しなければなりません。
会社の債権者は平等に扱われるべきという原則に反し、支払った場合には破産管財人の否認権の対象となり、かえって相手に迷惑をかける結果となりかねません。
また、最も注意すべき点としては、会社の破産につながる状況が生じた場合、少しでも早く弁護士に相談するということです。
通常、会社の経営が苦しくなった場合でも、経営者は手腕や実績もあるので、自力で乗り切ろうとしがちです。しかし、弁護士への依頼が遅くなった結果、代表者の責任が問われる状況になってしまう可能性も高くなります。
早い段階で弁護士に依頼すれば、どの行為が代表者の責任につながるのかも相談でき、最もダメージの少ない方法で会社の破産を進めることができます。
ですから、経営危機に陥った場合、代表者の経営に関わる一つの大きな判断として、専門家へのアウトソーシングを視野に入れ、早めに弁護士に依頼することも大切です。
会社の倒産は、泉総合法律事務所津田沼支店へご相談下さい。
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